Design Academia - 国公立デザイン系大学会議

新たなデザイン領域「芸術文化」

芸術史と産業・技術史の永きに渡る必然の中で、美術領域は、建築・絵画・彫刻・工芸・産業デザインなどの多分野に枝分かれしました。20世紀の(産業)デザインの役割は「資本主義社会における、あらたな美意識の提示」だったといえるでしょう。

しかし、近年のICT に端を発する急激な産業革新と社会の変容は、旧来の概念を駆逐し、人々の生活のみならず、生きる価値についてまで、あらたな順応を求めています。

ならば、今後求められるデザインの役割は、「次の時代における、新たな人間らしさの提示」であり、それは単一領域での解決は難しく、芸術領域全体が一丸となって取り組む責務ととらえるべきです。私たちは、「芸術文化」を、分断した美術分野を融合する新たなデザイン領域ととらえます。それは同時に、新たな建築領域であり、新たな絵画・彫刻・現代アート領域であり、新たな工芸領域と同義です。その上で、複数分野の各特色を横断した学びが、混沌とした問題解決に有効であると考え、融合的な教育内容と学習支援を実施しています。

 

 

地域と共に生きる
富山大学芸術文化学部(以下GEIBUN)のキャンパスは富山県高岡市にあります。ご多分に漏れず、少子高齢化・人口減や産業の斜陽化が顕著な地方都市です。大都市に位置せず、かつ「芸術文化」を冠した学部の特性とは、そして担えることとは何でしょう。古来の地場産業界で次世代への産業継承にもがく職人、何世代も続く祭事を悪戦苦闘しながら受け継ぐ市井の人々など、富山県には伝統的な産業や文化と、情報化された現代社会との交差点で生まれる切実な課題がいくつもあるのです。GEIBUNでは、そんな地方の現実を教材としてとらえ、モノだけでなく体験に価値を求めるコト、それらを総合的に展開する「モノ語り」を、地域のみなさんと共につくり、世界へ発信していきたいと考えています。

 

2021.6.24