Design Academia - 国公立デザイン系大学会議

「Microsoft Teams」を利用した遠隔授業の取り組み

2020年度前期はCOVID-19対応とともに始まりました。通常の対面授業が停止された中で、フィジカルな体験を通して獲得される美術教育を、どのように具体化させていくかが大きな課題となりました。それはとりも直さず、普段あまりに当たり前すぎて頭で意識することさえなかった、美術との根本的な関わり方自体を考え直すきっかけともなりました。特に1、2年次の学生には、基本的なスキルや素材との格闘の中で得られる対象との距離感や制作プロセスの確認など、教員との対話を通して理解・習得していく「場」が必要不可欠です。私たち教員だけでなく学生も、初めての遠隔での授業形態という半ば手探りのような状況で、ある意味実験的に学修効果を探りつつ進めざるを得なかったといえるでしょう。

本学では遠隔授業を進めるうえでの公式ツールが「Microsoft Teams」であることから、まずはこのコミュニケーションプラットフォームを使って、どのような実技・演習授業を組み立てることができるかという検証作業から始まりました。具体的にはTeamsの中に独立したチャネルをつくり、そのチャネルを通して学生への課題提示、また制作中の作品をスマートフォンで撮影した画像を学生にアップロードさせることで、進捗状況のチェックから講評までを行いました。前期を終えた段階では、おおむねこの方法で一定の学修効果を得ることができたように思います。特にテキストベースのコミュニケーションは教員への負担や煩わしさはあるものの、学生にとっては、よりきめ細かいやり取りやアドバイスの提供が行えたことが、対面授業にはなかった一つの効果として認められるでしょう。

その後、そのような経緯で制作された学生の作品は、7月から約1ヵ月間「カリキュラム授業作品展2020」として大学美術館で展示されました。横のつながりがほとんど遮断された中で、学生一人一人が自分に向き合いながら制作した作品の数々は、例年とはまた違った魅力を感じさせるものとなりました。

本学では今のところ後期の実技・演習科目については、対面授業を再開する予定です。今後、現在のような限定的な状況がいつまで続くかはわかりませんが、少なくとも美術に関しては、本来の身体や五感を通して得られる体験が重要であることに変わりはありません。前期の取り組みによる成果を、後期の授業の中でいかに生かしていくかが今後の課題と言えるでしょう。

大学美術館での展示〈Curriculum2020〉

2021.7.2