Design Academia - 国公立デザイン系大学会議

能登半島の先端、最果ての地である珠洲で、2017年に第1回奥能登国際芸術祭が開催され、7万人を超える来場者が訪れました。金沢美術工芸大学では、専攻・学年を超えて集まった学生と教員による、金沢美術工芸大学アートプロジェクトチーム「スズプロ」を結成し、珠洲市の大きな古民家でインスタレーション作品を制作すると共に、商店街と連携した企画などさまざまな活動を通じて地域社会と関わってきました。第2回奥能登国際芸術祭は2020年秋に予定されていましたが、新型コロナウィルスの影響により2021年秋に延期され、「奥能登国際芸術祭2020+」として開催されることになりました。「スズプロ」は活動の期間が増えたことでより深く地域に参入する機会を得た一方、金沢から珠洲への移動制限や住民との交流の自粛を余儀なくされてきました。その中でいかに活動を続け制作を進めるか、このありふれた課題に向き合っています。

今回、第1回から続く古民家での新たな作品制作に加え、作品制作期間、珠洲に滞在するための「拠点」として、空き家をセルフリノベーションするミッションが加わりました。「拠点」をどのような場とするべきか議論を重ねた結果、1階の一室を8畳の土間空間に改修することを決めました。そこからは掃除に始まって床を解体し、つくりながら考え、都度思い付いたアイデアをカタチにするデザイン検証の場となっています。珠洲への移動が制限される中、学内でコンクリート平板を制作し、珠洲に運搬して敷設するといった遠隔での作業を介した土間づくりも生まれました。作品制作期間の滞在場所としてだけでなく、土間を活かし会期中はワークショップなど交流の場、会期後も地域のアート活動の場として活用される「地域の拠点」を目指しています。

本プロジェクトでは、大学および大学院の授業でありながらも参加者たちが、学生と教員、アートとデザインといった既存の枠組みを超えて共同活動を行うことで、地域との新たな関係を模索してきました。そしてまさにこれから、地域社会と一体となった“さいはての芸術祭”が開催を迎えようとしています。コロナ禍においても珠洲でしか得られない体験や感動、人と人とのつながりが、学生および地域の財産となることを願っています。

 

デザイン検証の場となった「拠点」の様子

 

古民家でのインスタレーション作品制作の様子

2022.3.29