Design Academia - 国公立デザイン系大学会議

東京都主導の下、東京都立大学では2020年よりローカル5G環境に関する研究開発が重点的に進められており、本学科では、カメラとセンサーを内蔵した車椅子デバイスとARコンテンツで単独行動を楽しく支援することを目的とした、車いすユーザーのための屋外活動支援システム開発・提供プロジェクト「WHEE Project」を主導しています。本プロジェクトは串山久美子教授を中心に現在活発に推進されており、「ARゲームで楽しく単独移動を支援するAI車椅子システムの社会実装」と題して、高齢者や障害のある人が楽しく単独行動するための支援技術やコンテンツを開発中です[1]。ローカル5Gによる高速・大容量の移動通信システムを活用し、カメラ・センサを内蔵した、移動体や障害物情報を実時間で認識可能な車椅子デバイスをベースに、ハード、ソフトの面から開発を進めています。
WHEE Projectは大きく分けて、1. ビジョンシステム開発、2. ネットワークサービス開発、3. AR/VRコンテンツ開発に分けられます。特に3に関して、2021年9月4日から10日の約1週間にわたってARハッカソンを開催 [2]。大学内外合わせて29名の学生が9チームに分かれ、5G環境を活用したキャンパスで楽しめるARコンテンツ制作を実施しました。ハッカソンはオンラインで開催され、1、2日目はPsychic VR Lab 社の松岡湧紀氏を招き、AR/VR 開発プラットフォームであるSTYLY [3]を活用した開発方法を学ぶワークショップを実施。その後、参加学生たちはそれぞれのチームごとに分かれ、「Zoom」のブレイクアウトルームや「Miro」を活用して議論やプロトタイピングを行いました。このほか、 HADO [4] 開発で知られるmeleap社CEOの福田浩士氏による特別講演も開催され、参加者から多くの質問が寄せられました。
1週間後の成果発表日では、大学周辺に生息するモンスターをコレクションするものや、単位をくれなかった教授に仕返しをするアプリ、学生当時の出来事を地理情報的に保存してARで楽しめるもの、床面に仮想タイルを設置して楽しむARケンケンパなど、多様なARゲームが提案されました。各グループは発表時間8分の中で、紹介動画やスライドを用いて自由に制作したARゲームのプレゼンテーションを実施しました。ORPHE 社 CEO 菊川裕也氏、ontenna 開発者である本多達也氏、初日にSTYLYのワークショップを開催した松岡氏の3名による厳正なる審査が行われ、2チームに優秀賞、1チームに最優秀賞が授与され、最優秀チームには協賛企業からスマートランニングシューズORPHE TRACK [5] が授与されるなど、大盛況の中、本イベントは幕を閉じました。フルオンラインでのハッカソン開催でしたが、デジタルツールを利活用した一つのハッカソンスタイルを参加者および運営者が楽しみながら取り組んでいる様子が印象的でした。

参考:
[1] プロジェクト公式ウェブサイト:https://whee-project.org
[2] ARハッカソンウェブサイト:https://hackathon.whee-project.org
[3] STYLY:https://styly.cc/ja/
[4] HADO:https://hado-official.com
[5] ORPHE TRACK:https://orphe.io/track/

プレゼンテーション動画からの一部シーンを抜粋

2022.1.19