Design Academia - 国公立デザイン系大学会議

2023年、新しいデザイン科を目指して

日本最初の公立芸術系大学として

京都市立芸術大学は、1880年に創設された京都府画学校を起源とする公立の芸術系大学としては全国でもっとも長い歴史をもつ大学です。デザイン科は1939年に京都市立絵画専門学校の図案科としてデザイン教育が始まり、1950年に美術大学としてデザイン教育をスタートさせました。以降、上野リチ、伊三郎教授による指導のもと、日本において独特なウイーン工房の影響を受けたデザイン教育が始まり、1969〜1970年の大学改革、工芸図案科への名称変更を経て1971年から現在に至るまで、ビジュアルデザイン、環境デザイン、プロダクトデザインの3専攻体制でデザイン教育を実施してきました。

しかしながら、昨今の時代的変化の中で、デザインの課題は広範になり、あらゆる領域にデザインが浸透し、デザインが満たすよう求められる要件は複雑化しています。そのような社会背景において、脱領域化/広範化という事情に応える領域横断的なデザイン教育の試みを求めて、デザイン科変革の機運が高まりました。2017年度からデザイン科将来構想検討チームを組織し、移転後のキャンパス計画と並行して、約半世紀にわたって続いてきたカリキュラムを見直し、デザイン科改組の検討を進めています。そして、2023年のキャンパス移転時に新しいデザイン科をスタートさせることを目指しています。

ビジュアルデザイン専攻

京都市立芸術大学ビジュアルデザイン専攻では、①描き造ることによる造形力・認識力の醸成、②問題解決手法の習得、③自由制作によるビジョンの実現の3つを教育の目標と位置づけたカリキュラムを立案しています。また、専攻内のみで行う授業に加え、フランス・イタリア・ドイツなどの海外大学との共同授業および、国内の大学との連携授業も行うことで、従来からの造形の基礎を重視しながらも、医学・行動経済学・知財等の視点を取り入れることで生まれる新たなデザイン概念の中での教育を特徴としています。

フランス国立高等装飾美術学校とビジュアルデザイン専攻共催による「円」の概念を可視化するワークショップ

 

 

大阪大学との医学・看護・工学・芸術(デザイン)連携による共同授業のポスター

 

環境デザイン専攻

環境デザイン専攻では、京都の街並み・伝統建築・庭園の現場から学ぶことから始め、新しい技術を身につけることで、これまで養ってきた高い造形能力を昇華させます。環境デザインの領域は、家具のデザインから都市計画まで広域になりますが、長期的に継続し、単独ではなく、大局的な視点で全体の関係性をデザインすることを目指しています。学生たちの自主的な学びと、体験、研究の場を提供することにより、卒業後も生涯にわたり、世界各地の今後の環境と生活のデザインを豊かにできる人材を育てます。

 

デザイン基礎授業で地域移動カフェ制作

 

研修旅行先での先輩の仕事訪問

 

プロダクトデザイン専攻

「モノやコトの成り立ちや仕組みを見つめ、より良い社会をデザインする」をモットーに、プロダクトデザイン専攻は、デザインB(仮称)と名称変更し、社会変化に対応してコンセプトやモノ、コトのデザインを実践する人材の輩出を目指します。デザインB の「B」は、中心概念としてBecoming(なる/なりゆく/生成変化)を持ち、デザインの行動力(Be)・根本(Basic)・骨格(Bone)・裏面(Behind)・超越(Borderless)を意図し、デザイン教育における姿勢を表現しています。

 

大学院生がリーダーとなって進める学年横断授業(2回生、4回生、院生)の様子

2019.9.26