Design Academia - 国公立デザイン系大学会議

金沢美術工芸大学美術工芸学部デザイン科環境デザイン専攻の教育理念は、社会の多様な課題に対してさまざまなメソッドや表現手段から最適なものを組み合わせ、想いを美しく提案できるデザイン人材の育成です。そのために伝統と革新が共鳴する金沢の街をフィールドに、専攻教員5人で領域横断型のデザイン教育を研究・実践しています。教員の専門領域が空間デザインに関わるランドスケープ・建築・インテリアに加え、より人に近いスケールのプロダクト・グラフィックを含んでいるため、景観的スケールから人が手に取るパッケージまでを連続的に学べることが特徴です。
本専攻において、1学年20人の学生が取り組む演習科目のうち、教員が単独で担当するものは少なく、専門分野の異なる教員による共同授業や、演習を前後で接続させるリレー形式で行うことが定着しています。その結果、今デザインしている領域やスケールの前後左右を常に意識する広い視野を身につけることが可能となりました。また、1年次の基礎スキルのリレー、2年次の商品パッケージと店舗のリレーを経て総仕上げとなるのが、3年次前期の地域連携リレー課題です。これにより受講生は空間デザインの基礎力を統合的に修得することができます。さらに、以前は個別に実施していた建築設計やインテリアデザイン、家具デザインの演習を一括したことで、それぞれの課題を内包した1テーマの中で連続して学べるようになりました。プロフェッショナルの現場では、領域横断型のデザインと言いながら、それを効率よく分業することもありますが、大学の演習だからこそ、すべてをつくることで得られる達成感や得手不得手を実感してほしいと考え、企画構想からグラフィックまでのデザインプロセスを1人でやりきることに挑戦してもらいます。


フィールドワークの様子

 


建築設計とインテリアデザインの共同授業

 

例えば、2019年度は「富樫の民間施設を活用した石川・金沢のためになる新たなサービスの提案 」というテーマで、金沢市内の民間企業の社員寮をベースにリレー形式の演習に取り組みました。
演習では、まず敷地周辺をランドスケープデザインの視点でフィールドワークを行い、街への理解を深めるとともに、並行してサービスデザインの手法を用いることで新たなサービスを模索。サービス内容を検証しつつ建築計画に取り組み、柱や梁などの基本構造を生かした大胆なコンバージョンプランに始まり、詳細なエクステリア・インテリアデザインやサイン・ロゴ計画の設計を行いました。
このように学生たちは約4ヵ月の期間で幅広くデザインを学びながらひとつのテーマをまとめ上げることにより、マクロ視点で気づき、ミクロ視点まで表現する力を養います。また、こうした演習は、環境デザイン特有の多層・多様な領域から自身の専門性を絞ることにも効果的です。その後はまだ浅い専門性を3年次後期の課題で深めることに挑戦し、最終的に4年次の卒業制作につなげていきます。このように領域横断型のリレー演習を積み重ねることで専門性を見極め、磨いていくことが本専攻の広く浅く深いデザイン教育の骨子となります。


プロダクトデザインの講評会

 


柳宗理記念デザイン研究所での学外成果展


学生作品 1

 


学生作品 2

 

環境デザイン専攻教員

ランドスケープ領域 鍔 隆弘 教授

 

建築領域 坂本 英之 教授

 

インテリア領域 角谷 修 教授

 

プロダクト領域 北村 賢哉 准教授

 

グラフィック領域 畝野 裕司 教授

2019.9.26