Design Academia - 国公立デザイン系大学会議

2020年から始まる新しいデザイン教育

九州大学芸術工学部は、前身である九州芸術工科大学が2003年に九州大学と統合して誕生した学部です。1968年の学部開設時は、環境設計、工業設計、画像設計、音響設計でスタートし、1997年に芸術情報設計学科を設置して5学科となりました。

それから現在まで、少子高齢化、地球環境問題、経済活動の持続可能性など、価値観の転換を含めたさまざまな社会的課題が生じています。こうした背景に伴ってデザインの領域が拡大している現状から「芸術工学」教育を改めて見直す必要が出てきました。

現在、デザインの領域は、従来の形や色といった意匠的な成果を目的としたものから、体験を含む製品とサービスや価値創造プロセス全体、さらにはビジネスモデル、社会システムの仕組みといったより広範な分野へと広がりを見せています。また、デザイン概念は、現状の課題に対する解決に限らず、「未来はこうもあり得るのではないか」という「問い」の創造までを含むようになりました。その結果、デザインに関連する産業界からは、こうした変化に対応するために領域を横断する能力を持つ「高度デザイン人材」が求められています。

このようなデザイン領域の拡大、変化に対応した教育を実施するために、九州大学芸術工学部では教育課程を見直し、現行の5学科を1学科に統合。その中に緩やかに並列する5コースを設け、これまでの芸術工学の学問的アイデンティティを継承しつつ、社会が要請する高度デザイン人材を育成するための芸術工学部の改組を実施しました。

教育上の目的

芸術工学部は、「技術の人間化」を実践する学部として、工学や技術に関する科学的な知識、人間や社会に対する深い洞察や、社会の状況に的確に対応できる豊かな教養を持ち、国際的にも通用する広い視野と学識を有する創造性あふれる高度デザイン人材の育成を目的とします。


図1: 拡大するデザイン領域のイメージ

新しい芸術工学部の特徴

  • 新たな社会課題に対応できる柔軟で多様な教育プログラム(1学科5コース制)を導入
  • 50年間の伝統あるデザイン教育(文理融合+実践重視の教育)を深化
  • イノべーション創出に必要な真の知識やスキルを教授
  • すべての人が住みやすい社会を実現するデザインを多角的に考え、実践
  • 世界のデザイン動向を注視し、国際的に活躍できる人材を教育

教育カリキュラムの特色

  • 多種多様な科目群から、コースを超えて興味に合った科目が履修可能
  • 1〜2年次にデザインの基礎を体系的に学習
  • プロジェクト型の授業で実践的なデザインスキルを習得
  • コース横断プロジェクト型の授業や卒業研究では、関連分野の複数の教員から指導が受講可能
  • 希望する学生は、国際プログラムが履修可能

新たに設置される5コースと国際プログラム

環境設計コース

建築、都市、緑地、ランドスケープなど、より良い環境をデザインできる総合的な設計家を育成します。

メディアデザインコース

新しいメディアテクノロジーを応用し、創造的なデザインに挑戦する高次のデザイナーを育成します。

音響設計コース

音に対する鋭い感性と高度な専門的知識を兼ね備えた、総合的な設計能力を有する人材を育成します。

インダストリアルデザインコース

生活者の立場から俯瞰的視点を備え、製品、生活環境、サービスを創造する広義のデザイナーを育成します。

未来構想デザインコース

コトやサービス、ビジョン、社会の在り方を芸術工学のディシプリンをツールとして総合的にデザインする人材を育成します。

 

国際プログラム(コースに所属したまま履修)

2年次に、英語による講義や演習を通して留学で必要なスキルを身につけます。3年次に、世界最先端のデザイン教育を行っている欧米やアジアの大学に留学し、帰国後に留学の成果発表を行います。国際プログラム履修者には、学士号に加えて国際プログラムの修了証が授与されます。

2019.9.13