Design Academia - 国公立デザイン系大学会議

山陽本線広島駅から西へ2駅目の横川駅を中心とするエリアには、大学とのアクセスも良いことから広島市立大学の学生が多く住んでいます。かつては広島を代表するモノづくりの町であったこともあり、アートやデザインに対して理解もあり大変積極的な地域です。

これまでも多くの若手アーティストへの支援的活動があった経緯から、2020年度にアーティストの短期滞在制作・発表を目的とするレジデンス(AIRヒロシマ)の内装デザインと横川駅南北自由通路のグラフィックワークを手掛けることとなりました。内装をデザインするにあたっては地元企業の素材に注目し、レジデンスの内装にはWOOD PRO(広島県廿日市市の木製品の製造メーカー)の扱うリサイクル足場板を用いたほか、南北自由通路には歴清社(横川にある箔押し加工メーカー)の箔シートを利用しました。

また、南北自由通路へのグラフィックワークに参加する学生は、依頼元である横川エリアマネジメント連絡協議会の会議に参加し、南北自由通路の抱える問題点のリサーチを実施。その後、歴清社の視察を通して環境と素材の可能性の両面からデザインに求められるミッションを明確化した上でグラフィックワークに取り組み、デザイン案をもとに施工業者への依頼に必要な図面データの作成を行ないました。予算や環境上の仕様など、さまざまな課題が浮かび上がったことから、すべて思ったとおりには進まない状況も発生しましたが、大学での実習では学び難い実践的な体験を地域社会と連携して行えたことは、学生たちにとっても大きな成果となりました。

短期間に多くの作業が求められ学生にもかなりの負担が掛かりましたが、それだけに完成した際に味わった達成感は、今後クリエイティブな仕事に関わるものの醍醐味としてかけがえのないものとなっただろうと思われます。

横川駅南北自由通路のグラフィックワーク「金雲のみち」
賑やかな街の雰囲気と、落ち着いた住宅街、モノづくりの街、酔いどれの街・・・
様々な姿を見せる横川を、眩い雲の姿に見立てた。
四季の変化を雲の形に与え、南北を一年間の時間軸に表した。
横川駅の南北をつなぐ自由通路を抜けると街の雰囲気が一変する。
まるで煙に巻かれたようだ。
(Design:亀山慶一郎 / 富田菜月[広島市立大学芸術学部デザイン工芸科])

 

デザイン検討中の様子

2022.3.29