Design Academia - 国公立デザイン系大学会議

第2回国公立デザイン系大学会議レポート(前編)記事はこちら
報告を行った3大学への質疑応答が行われました。ここではその一部を取り上げます。

 

佐賀大学「創造のためのレジリエンス。―この先を生き抜く力とは」について

東京都立大学 普段の授業時の学生へのサポートはどのように行っているのか?

佐賀大学 すべてオンラインになって、学生の力を借りずには授業が成り立たない実態がある。私は2・3年のゼミ生に、いわゆるTA 的な働きを手伝ってもらっている。教員の負荷は、オフライン時に比べると大きい。従来の授業のフォーマットから出るしかないと、何でもできることは行っている。オンライン授業になって、回線の問題かモチベーションの問題かは不明だが、出席できない学生もおり、新入生で既に休学を考えているという相談を受けたこともある。この話を聞いたゼミ生が、学生へのサポートを申し出てくれた。弱い立場の人を手伝おうという気運は高い。

静岡文化芸術大学 VR オープンキャンパスを学生が主体となって行ったことに感銘を受けた。開催するにあたっての、教員や大学事務局等のバックアップはあったのか?

佐賀大学 当初、入試課が外部の業者とともにWEB 上でのオープンキャンパスの内容を検討していたが、PDF の配布などにとどまっていたため、VR の研究をしている私の元に相談が持ち込まれた経緯があった。そこで学生に「cluster」というバーチャルSNS ソフトがあるが、何かやってみないか? と投げかけたところから始まった。内容については入試課、学生、私で対応した。答えることができないこと(例えば入試の内容など)については、学部長、学長を含め検討を行った。

九州大学 学生の授業への参加しやすさなどへの工夫はあったのか?

佐賀大学 他愛のないことだが、チャット上で出席を取る際「はい」と全員に返事を書き込んでもらった。システム上入出記録をデジタルで取ることはできるが、少しでも参加した証になればと考えた。オンラインになって、学生の評価を何によって行うかについては手探りの状態が続いている。
少し話は異なるが、学生団体「げちでのたまご」が開設したサイトでは、学生による、教員や授業を評価するアンケートが実施されている。学生たち自身が学びのあり方を真剣に考えていることを実感している。

 

京都工芸繊維大学(Re)generating Japan―コロナ後の新しい『新しい生活様式』について思索する」について

愛知県立芸術大学 参加者の主体性を促し、「教員の言うことを聞かなくて良い」という手法に共感した。創造性において教員の果たす役割とはなんだと考えるか?

京都工芸繊維大学 参加者に何度も繰り返し伝えたのは、「ツール依存でデザインを行わない」ということだった。それは試行錯誤の痕でしかなく、デザインとは別のものだと徹底して伝えた。とにかく本質的でベーシックな、思索と実行と省察の反復からしか生まれ得ないデザインを目指した。今回は、デザイン系学部の学生だけではなかったので、作れる人・作れない人それぞれのやり方で、手法そのものを問いながら課題に向き合ってもらった。例えば早稲田大学の演劇サークルのチームは、「演じる」作品を作った。これはデザイン思考でいう「スキット」と言われる種類のものだったと思う。

愛知県立芸術大学 メンターとしての教員の役割はどのくらい必要だったか?

京都工芸繊維大学 バーチャルオフィスアワーを開いている間に、26人の参加者が相談に訪れ、彼らには細かくメンタリングを行った。逆にいえばそれ以外の人にとっては必要なかったということ。参加者は、のびのびと好きにできることの開放感を感じていたようだ。私自身、特にオンライン授業が始まってから、教員と学生の役割の固定化に息苦しさを感じていたため、この取り組みに至った。

東京都立大学 この演習で単位が出るのは、慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC)からの参加者だけで、最終的に15組中3組のみ課題を提出できたということだが、それをどのように評価しているか?

京都工芸繊維大学 SFCでは1年次から必修科目を極力少なくして、自分の勉強を自力で組み立てるというプログラムをとっている。そのため、「能力は履修に十分ではないが、面白いからやってみる」「発言はできるが、手は動かない」という学生が生まれやすい。今回も紀要文献が読めない、技術動向を追えていないという、本来履修に向かない学生が多くいた結果だと考える。それを防ぐべく、ボリュームのあるマニフェストを書き、資料一式を提示することでハードルを上げたつもりだったが、うまく機能しなかった。このような学生が生まれる問題への解決方法が、他大学が行っているような積み上げ学習にあるのかは、確信がない。一方、単位は出ないにも関わらず、それ以外の学生は90%が課題提出に至った。特に沖縄やニューヨーク、ロンドンから参加した学生は、距離を超えて参加できるメリットを強く感じていた。今日、他大学の取り組みを聞いて、この演習は、ボトムアップ型ではなく、モチベーションが高い学生を引っ張り上げるやり方だったと感じている。

 

千葉大学「千葉大学デザインコースの事例」について

九州大学 オンライン、オフライン問わず、学生には「相手が何を考えているか」推察し、それを自分の価値観として取り入れてほしいという希望があるが、そのようなものを得られる学生間のコミュニケーションの工夫はあるか?

千葉大学 オフラインの授業であれば、一人の学生に対するコメントは他学生へのコメントにもなるし、学生同士がそれについて話していることも多い。オンラインだとコミュニケーションの場が自然発生しない。やはり「目的的でない場」の設定が重要だと考える。授業の後、私が退出した後も学生が残れるようにしておくと、2~3時間そのまま話し続けているようなこともあった。発表で共有したUX 評価時も、おそらく先輩と後輩で雑談が生まれていたと思う。

 

第2回 国公立デザイン系大学会議
2020年11月7日土曜日13:30~17:00
オンライン開催(Zoom)

■シンポジウム:13:30~15:50
1. 開会挨拶:13:30~13:35
谷 正和 氏 (九州大学副学長・大学院芸術工学研究院長)

2. 来賓挨拶:13:35~13:45
吉田 光成 氏 (文部科学省 高等教育局 専門教育課長)
菊地 拓哉 氏 (経経済産業省 商務・サービスグループ クールジャパン政策課長補佐/デザイン政策室長補佐)

3. 議長の選出について:13:45~13:50

4. コロナ・新しい生活様式とデザインについて:13:50~15:50
(1)取り組み事例の報告:13:50~14:50(3大学各20分)
・佐賀大学
・千葉大学
・京都工芸繊維大学
(2)ディスカッション:14:50~15:50

■ 総会:16:00~17:00
議 事
(1)報告 Webサイト「Design Academia」について
(2)審議 ・会議
・会費
・Design Academia/冊子およびWebサイト
・その他

[運営担当]
九州大学大学院芸術工学研究院
九州大学未来デザイン学センター

[協力]
公益財団法人日本デザイン振興会

2021.4.23