Design Academia - 国公立デザイン系大学会議

今回で第2回となる国公立デザイン系大学会議には、参加大学17校が参加し、オンラインでシンポジウムが行われました。2020年の大学は、COVID-19の蔓延という未曾有の出来事が起こり先行きの不透明な中、「大学とは」「教育とは」という大きな問いを突きつけられ、具体策を求められた1年間でした。今回は、全体テーマを「コロナ・新しい生活様式とデザイン」と題し、各大学の事例を共有しながら、活発な質疑応答が行われました。
会議の前半では、佐賀大学・千葉大学・京都工芸繊維大学の3大学が、新型コロナウィルス感染が起こった2020年に、大学で取り組んだことや新たに得た知見、授業方法などについて報告を行いました。それぞれが手探りの中で行ってきた取り組みが共有されました。

「コロナ以後の社会」をどう捉えるか?
「ウィズコロナ」「アフターコロナ」など、現在の社会状況に対するさまざまな呼称が生まれていますが、新型コロナウィルスが影響を及ぼした社会は、これまでと同じ姿ではありません。近年、社会課題を解決する機能をより期待されているデザインにおいては、「社会そのものをどのように捉えるか」というのも大きな要件になります。
京都工芸繊維大学 KYOTO Design Labの水野大二郎特任教授は、「(Re)generating Japan―コロナ後の新しい『新しい生活様式』について思索する」と題して、コロナ期間中に行った演習についての発表を行いました。この演習は、コロナによって変化した生活様式そのものについて考えモノづくりを行うもので、水野特任教授によれば「仮想空間と現実空間、情報環境と物理環境、デジタルとアナログといった二項対立ではなく、そこから止揚されて現れる新しい空間や環境、生活様式について考えたかった」とのこと。コロナ“対策”というデザインではなく、コロナ後に“ありうる生活様式”を考えるというテーマに取り組んだことが発表されました。
佐賀大学の中村隆敏教授は、「創造のためのレジリエンス。―この先を生き抜く力とは」と題して発表。困難な中にあっても心折れることなく、状況に合わせて柔軟に生き延びようとする力を、学生が自主的に立ち上げたプロジェクトの中に見ました。

オンラインで授業をどのように組み立てるか?
各大学ともに、オンラインに移行して行った演習の授業をピックアップして紹介しました。
千葉大学の小野健太准教授は、「デザイナーのスキルを向上させるための、新しいデジタルツールの開発」を課題に演習を実施。オンラインの特性を生かし、学外から非常勤講師を複数招く打診をしたところ、全員がポジティブに引き受けてくれたという経験を共有しました。「プラットフォーム(p5*JS)上で実際に動くこと」「普通のPCやスマホで動くこと」など、いくつかのレギュレーションの元に、2・3年の学生たちが課題に取り組みました。ポイントは、完成最後に1年生からオンライン上で、作品のUX評価テストをしてもらうことでした。未だ大学に一度も通学できない状況の1年生とコミュニケーションをとることで、学部の雰囲気を伝達もできたほか、困難な状況にあってもポジティブにソリューションを考えて実行するデザイナーの姿勢を伝えられたと発表をまとめました。
京都工芸繊維大学の演習には、大学外にも参加を呼びかけたところ、北米、英国、関東、関西、中国地方、九州沖縄の各地から、合計105名36組の参加者が集まりました。デザイン専攻だけでなく多様な学部から参加があり、学際的なアプローチが可能となりました。またオブザーバーとしてさまざまな研究者らの参加も実現しました。中には人工音声の生成ソフトやVR空間を作るソフトを使用した人もおり、個人の身体や場所に規定されないデザインの可能性が見えて示唆的だったと発表されました。

学生の自主性をどのように確保するか?
オンラインによる授業は、時間と場所から自由になるものの、学生のモチベーションを保つことや、自主性を引き出すという点で課題を感じている大学も多く、そこに注目した話題も上りました。
佐賀大学の事例では、授業の全てがオンラインになって早々に、在学している学生団体「げちでのたまご(げ=芸術、ち=地域、で=デザイン)」から、新入生のための支援サイトを開きたいと申し出がありました。学生目線での学習ツールのマニュアルや大学生活にまつわる情報など、幅広い情報を提供するサイトが立ち上がり、2ヵ月で7万回以上のアクセスがありました。このサイトは半年以上運営する中で、地域や企業とつながるためのプラットフォームとして発展。ワークショップや勉強会、プロジェクトの実施が行われています。
さらに、リアルでのオープンキャンパスが開催できなくなったため、学生自らバーチャルキャンパスを制作。アバターとして参加するVRオープンキャンパスが開かれ、オープンキャンパス当日は3000人あまりの高校生が訪れ、大学生が質問に応じるなどの運営を行いました。中村教授は「コロナ禍というやむにやまれぬ事情ではあったが、自ら課題を発見し課題解決を進める、まさにレジリエンスな学生の姿勢に、教員の側が学ぶことも多かった」と話しました。ただしこのような変化の激しい環境に馴染めずスポイルされている学生を、どうすくい上げるかには課題が残ると締めくくりました。
京都工芸繊維大学の演習では、参加者の主体性を何よりも大切にしたいと、「Zoom」のブレイクアウトルームというグループ機能を使用。参加者間の自由なディスカッションを促す授業の設計を行いました。さらに教員とアクセスできるバーチャルオフィスアワーを実施し、希望者はその時間帯であれば自由に出入りし、質問ができるようにしました。
演習終了後のアンケートでは、教員からのアドバイスなどのタイミングや頻度が十分だったかの質問を行いましたが、結果的に約2割の参加者は「そもそもそのような時間は必要なかった」との回答で、参加者同士のやりとりのみでコミュニケーションを進めた人も多く、これは予想外だったと話しました。水野特任教授は、研究室や談話室、工房などの「教員が不在で、学生たちが仲良くなったり、意見交換をしたり、アイデアを高めたりする、一見無駄とも思われる他愛のない時間や空間」が、実は大学の機能として重要であることを再認識したと共有しました。

 

会議後半には、事例紹介頂いた大学に対し、参加大学からたくさんの質疑が寄せられ、活発な議論が行われました。

2021.4.23