Design Academia - 国公立デザイン系大学会議

金沢美術工芸大学の「コロナ・新しい生活様式とデザイン」の取組み

遠隔授業導入へ
金沢美術工芸大学は教育に関する活動指針の中で「手で考え、心でつくる」をモットーに掲げた教育を進め、少人数による、対面での教育を大切にしてきました。遠隔教育とは距離を置いてきたとさえいえる本学ですが、今回のCOVID-19の感染拡大は、私たちにオンライン授業の導入に向けて大きく舵を切らせることになりました。ここでは主に、2020年4月上旬から本格的に準備を始め、5月11日まで繰り下げた新学期に向けた遠隔授業のシステムの整備とその結果、現時点での振り返りをまとめたいと思います。

 

遠隔授業開始に向けてシステムの準備
遠隔授業のために、次のようなシステムを整備しました。

  • 「KANABI-Portal」の立ち上げ
    「G-Suite for Education」を契約し、ポータルサイト「KANABI-Portal」を立ち上げ、掲示板での学生への通知や申請書類の配付、授業毎のClassroomを整備。学生が大学で起きていることを把握できる体制を整えました。

 

  • 独自ドメインの取得とKANABI-Portal用のアドレス発行
    遠隔授業用のサイトKANABI-Portalを、従来の学内システムとは独立させる形で立ち上げ、2つのシステムの混乱を避けるためにKANABI-Portal用のドメイン(@kanabi-portal.jp)を取得。学生、教員共に新たなアドレスを発行しました。
  • Zoomの有償アカウント取得
    専任教員全員分と非常勤講師分用の「Zoom(ビデオ会議システム)」の有償アカウントを取得し、双方向性を確保。授業では、Zoom以外にもGoogle Classroomの「Meet」などを使っています。

 

KANABI-Portalの効用
現時点で効果的であったと思われる取り組みを3点、紹介します。

1.全ての授業でのGoogle Classroom使用による大学の実感
教員の中には、すでに使ったことのあるビデオ会議システムなどのツールを用いたいという要望もありましたが、その場合でもKANABI-PortalのGoogle Classroomで出欠を取ったり、Google Classroom内の「ストリーム」でその日の授業形態(オンデマンドなのかライブなのか、ライブ配信の場合にはMeet、Zoomなどツールを示したり、URLを示す)を知らせるようにルールを策定。それにより、学生は大学キャンパスに通学するように、まずKANABI-Portalにアクセスするため、ネット上の仮想ではあるものの、教職員が集団となってつながっている大学が多少は実感できたのではないでしょうか。

2.常勤、非常勤を問わない全体研修を通した情報共有
前期授業に関わる、常勤、非常勤を問わず全ての教員を対象に、Zoomを用いた全体研修を実施。多様な立場の先生方が一緒に研修に参加することにより、さまざまな疑問と解決策を共有することができました。さらに、教員専用の情報交換用Google Classroomを立ち上げ、多くの情報が共有できたことは、授業開始まで時間のない中で効果的でした。

3.遠隔授業支援チームによるサポート
遠隔授業実施にあたっては、専任教員でも最初の数回を、また非常勤講師で希望される先生を支援するために、「遠隔授業支援チーム」を3ユニット立ち上げました。このチームの役割は、Google Classroomの整備や教員への助言、自身では機器の操作が難しい教員やゲストスピーカーなど単発的に授業に参画される方への支援です。教員のしたいことに対する実現方法の助言や、教員の不安感の受け止めに効果を発揮しました。

 

現時点での振り返り
実技系の大学にあって、講義系科目以外の授業の進め方には課題も残りますが、教員の中からは学生のために技術や考え方の言語化、映像化に取り組む中で自身の教育を見直すきっかけになったという意見が聞かれました。また、講義系科目であってもオンデマンド授業を実施した際には、学生が自分のペースで学ぶことができ、リアクションを求めると対面の時よりも質・量共に充実しているといった感想が寄せられています。今後これらの経験を精査しながら、どのように遠隔教育やそのシステムと取り入れていくのかを考えていきたいと思います。

2021.7.2