Design Academia - 国公立デザイン系大学会議

人間中心の情報環境をデザインする

公立はこだて未来大学は、2000年に開学した、情報系の公立大学です。「オープンスペース・オープンマインド」をモットーとし、「デザイン科学に関する高い専門能力」「研究的態度を支える問題探究力・構想力」「共創のための情報表現能力・チームワーク力」「自律的に学び続けるためのメタ学習力」「専門家として持つべき人間性」を育むことを目標としています。
学部のデザイン教育の目標は、人間中心の情報環境をデザインするために必要な思想、知識や技法を身に付けることです。情報デザイン、認知心理学、社会学、コミュニケーションなどさまざまな学問を融合しながら、今日の社会基盤となる人と共存する情報環境を構築する思想、快適な情報環境をつくり出していく技法を学びます。ここから育つのは、人間とコンピュータの新しい関係を切り拓くことのできる人材です。
大学院の博士前期課程は、5つの領域に分かれており、デザインの領域は、メディアデザイン領域です。「現実の社会環境に参与し、当事者と共に課題の発見と創造を繰り返し、新たな環境をデザインする」能力育成を目指します。
博士後期課程では、デザイン分野の課題を体系的に理解し、学術・産業の発展に寄与する情報デザインの成果を世に示しますとともに、情報デザインの新理論や新手法などの探究を目指します。

学部教育
情報デザインコースの概要
情報デザインコースは、情報や日常の環境を人間中心にデザインするための理論や技術を、基礎から応用まで学びます。人が情報社会で豊かに生きるためのデザイン理論や表現方法に加え、情報科学や認知科学の最新の理論と実践を学びながら、情報デザインの最前線に立つ力を養います。
そのカリキュラムは、ディプロマ・ポリシーに掲げた「①システム情報科学に関する高い専門能力」「②研究的態度を支える問題探究力・構想力」「③共創のための情報表現能力・チームワーク力」「④自律的に学び続けるためのメタ学習力」「⑤専門家として持つべき人間性」を養う目的で組まれたものです。
1年次から2年次では上記の目的のうち、特に②③④⑤の重要性を実践的に学び、2年次以降は、コースの専門科目群において人間中心設計や共創などの①を身に付けるとともに、プロジェクト学習や卒業研究などの実践の場で②④⑤を深めていきます。

① 教養基礎科目群(1~4年次)
教養基礎科目群では、人間の形成、社会への参加、科学技術と環境の理解、健康の保持を目的とし、幅広い教養と将来の自律的諸活動への導きとなる知識を身に付けます。
② コミュニケーション科目群(1~2年次)
コミュニケーション科目群では、科学・工学・デザインという文脈における、多様なモダリティとリテラシーを駆使したコミュニケーション能力を育成します。
③ 学部共通専門科目群
学部共通専門科目群では、専門的基礎的な能力(計算論的思考、数理思考、メディアリテラシー)を身に付けることを目標にしています。また、3年次のプロジェクト学習では、チームで地域や社会の中から課題を発見し、解決策を考え実施していく力を身に付けます。
④ 情報デザインコース専門科目群(2~4年次)
情報デザインコースでは、デザイン学、情報学と認知科学に基づいて、座学と実践を繰り返すことで、課題に取り組む知識と方法、態度を身に付けます。主な科目は、情報表現基礎、情報デザイン、ヒューマンインタフェース、ユーザセンタードデザイン、認知心理学、ワークプレイス論、知覚システム論などです。卒業研究では、情報デザインの基礎から応用に関する研究に取り組みます。

大学院教育
デザイン学を体系的に理解し、学術・産業の発展に寄与し、広い視野に立った高度な学術的内容を含む新規成果創出に向けたデザイン、または情報デザインの知識、研究方法論を身に付けるとともに、デザインまたは情報デザインの新理論や新手法などの探究を目指します。

博士(前期) 課程 メディアデザイン領域の概要
「現実の社会環境に参与し、当事者と共に課題の発見と創造を繰り返し、新たな環境をデザインする」能力育成に向けて、共通科目群および専門科目群を通して学びます。各科目は、目標に合わせて講義、演習・実習、討論、フィールドワークなどを組み合わせ、学生の主体的な問題解決・問題発見を促進させます。

①研究科共通科目群(M1)
研究科共通科目群では、学位論文を執筆するために必要なアカデミックリテラシーに関する科目が設定されています。国内だけでなく国際的なフィールドでも通用するアカデミックリテラシーおよび研究倫理を学びます。
②メディアデザイン領域専門科目群(M1-2)
メディアデザイン領域専門科目群では、デザイン方法論、情報技術を活かした先端的人工物の創造・情報表現の基盤技術と、それらを統合した高度な人と環境の関係のデザイン能力を身に付けます。

博士(後期) 課程の概要
システム情報科学の分野の中でデザイン学、または情報デザインを体系的に位置付け、学術・産業の発展に寄与し、広い視野に立った高度な学術的内容を含む新理論や新手法などの探究を目指します。

図1 プロジェクト学習(Interaction Elementsプロジェクト) 3年次

プロジェクト学習は、異なる学科・コースの学生が混じり合ってチーム共同で学ぶ、本学の根幹をなすユニークなプログラムです。学生たちは20個以上あるプロジェクトの中から一つのプロジェクトを選び所属します。その一つ、Interaction Elementsプロジェクトでは「未来を形作る部品を作る」をテーマに、人と環境がインタラクションするためのさまざまなプロトタイプを作成しました。写真の「Pop-up Shelf」はその例です。本棚に近づけた指先を左右に動かすと、その動きに合わせて本がウェーブのように波打つインタラクションを実現しています。

図2情報表現基礎III2年次

動的なメディアのデザイン実践を通して、デザインプロジェクトにおけるプロトタイピングの必要性とその方法について学ぶ授業です。2021年度は、グループごとに「オープンキャンパスでの未来大学の紹介」や「函館の観光事業促進」などの目的を設定し、その目的を達成するための「インタラクションを楽しむことのできるピタゴラ装置」のプロトタイプを制作しました。

図3 情報デザインII クラウドファンディングのためのプロダクト制作

実社会におけるプロダクトに潜む情報の構造を明らかにして,新たなコンセプトを導き、プロダクトを制作します。既存のクラウドファンディングサイトを分析し、「健康」というテーマでクラウドファンディング向けのプロダクトを制作しました。

 

2022.3.29