Design Academia - 国公立デザイン系大学会議

プロダクトデザイン系における遠隔授業への取り組み

千葉大学では、新型コロナの感染拡大防止に対する全学の方針として、授業開始を5月7日に遅らせました。また、学生によっては通信環境、コンピュータ環境が十分に準備できない可能性があるため、同時双方向型の授業は行わず、大学が運営する授業サポートシステムに音声付き、または動画付き教材を事前にアップし、学生が好きな時間に視聴するオンデマンド型で行うよう指示がありました。それに対し、非常勤講師も含めた担当教員で議論を行い、環境が準備できない学生を見捨てはいけないが、環境が整っている学生の学習機会を奪うべきではなく、非常時であるからこそできる限りの最善を尽くし授業を行うべきであるという結論になりました。遠隔コミュニケーションの拡大は、コロナ禍の有無に関わらず必ず近い将来われわれが経験する事象であり、デザイナーとしてしっかり経験すべきです。だからこそ、オンライン授業をポジティブに捉え、オンラインでしかできない演習内容を考え、あらゆる手段を駆使し実行していくという方針の下、2020年前期は2、3年生対象のプロダクト系デザイン演習5つを開講しました。

その一つの例として、「New digital tool to improve designer’s skill」を紹介します。この演習授業は、p5.jsを開発プラットフォームとしてデザイナーのスキル向上のためのツールを開発することを目標とした演習授業です。新型コロナの影響により、外出できず自宅で過ごす時間が長くなるため、この機会をプログラミング独学のための絶好の機会と捉え、このような課題を選択しました。また開発したツールを実際に使用してもらい、フィードバックを得るテスターとして、1年生に協力してもらいました。本年度の1年生は、入学してから一度もキャンパスに来ることができておらず、ストレスや不安を感じているであろうと考え、オンラインではありますがデザインコースの先輩と1対1でコミュニケーションできる機会を提供することも目的の一つとして行いました。毎週の進捗確認では、p5.js上のプログラム画面を「Microsoft Teams」で画面共有しつつ、実際にプログラムを動かすことにより、フィードバックを実施。コミュニケーションのテンポが遅く、リモートによる不満を感じることもありましたが、総合的には、リモートだからこそプログラミング学習に多くの時間が割くことができ、最終作品もクオリティが高いものが提案できたと感じています。

ほかの演習授業についても、全ての教員がこのような大変難しい状況にありながらも、後ろ向きでフェイルセーフな対応を選ばず、常にソリューションを考え続け、諦めることなく実行するプロのデザイナーとしての姿勢を伝えることができたように感じており、演習授業として最も重要な事を伝えることができたと思っています。

作品例「HSB色空間を学ぶためのツール」

 

作品例「画面上で平行間隔を養うためのツール」

2021.7.2