Design Academia - 国公立デザイン系大学会議

インダストリアルアート学科におけるcovid-19チャレンジ

2020年2月後半から始まったcoivd-19の影響により、まずは各研究室でのゼミが適時オンライン化されました。すでにインダストリアルアート学科(以下IA)ではiawiki(wiki形式による学科情報集約Webサイト、以下wiki)および「Slack」を利用し、教員と在学生はコミュニケーションをとっていました。そのためコロナ禍においてはwiki及びSlackを徹底活用した情報共有を促進させることとしました。一方で新入生に対する情報伝達に対しては、入学者向けのwikiおよびSlackへの登録案内用紙を別途作成し郵送しました。結果として4月初旬にはほとんどの新入生もIAのネットワークに参画することができるようになり、その後の相談や情報共有を在学生同様に円滑に行うことができました。2020年度前期の授業は5月(GW明け)からの開始となり、IA教員はほとんどの授業を「Zoom」でのリアルタイム配信に切り替えることとなりました。その中からいくつかの試みを紹介します。

 

自作アプリケーションによる気楽なコメント支援
Zoomではしゃべらない際には常時マイクをミュートにすることが推奨されているため、教員は静寂とも呼べるZoom内にて一人淡々と語りかける忍耐が必要とされています。Zoomによるチャット機能では、自身の名前が出てしまうためか、学生が気軽に質問するような活発な発言を得ることが困難です。そこで教員が自作のコメントシステムを学生に提供することで、匿名のコメントを直接教員の配信画面に載せることができるようになったほか、音声読み上げや音声リアクション機能を利用して、マイクを使用しなくとも、教員に対して気軽な語りかけを可能にしました。

 

授業中の様子
学生の課題発表に対して文字や絵文字などのリアクションが画面上に表示されている

 

複数アカウントによる自由な映像切替
一人の教員が、同時に複数のアカウントを利用し、ビデオ画像をそれぞれホワイトボード、書画カメラ、動画再生、パワーポイントなど機能に応じた、複数教材ソースの同時配信を行うことで、学生側が好きなタイミングで見たい教材が見られるシステムを構築しました。従来の映像配信システムでは、視聴者に対して送り手側のタイミングで見せたい映像を提供していましたが、今回の取組ではそこに対話性をもたせ、見たい内容の教材映像を、受講者自らがスイッチングできるシステムとしました。

 

学生自宅への直接配送
模型制作や電子工作など、手元にハードウェアがないと授業が成立しない授業においては教員や学生の協力の下、受講生に対して直接宅急便を送付するなどの対応が取られました。ゼミでは学生の自宅に3Dプリンタを発送し、それらを学生がレビューして記事を掲載する取り組みも行われました。アニメーションの授業では、アニメに用いられる動画用紙、アニメタップなどの専門機材を受講生全員に送付し、受講生同士はオンラインでミーティングを行い、コラボレーションによる作品制作も授業内で実施されました。

 

Miroを利用したWS
デザイン思考において、他者との対話やディスカッションはなくてはならない要素ですが、オンライン環境において授業中のグループワークにはいくつかの課題があります。Zoomのブレイクアウトルーム機能を使うことで、一応のグループワークは可能になりますが、アイデアのスケッチや、イメージ共有、さらにUXマップなどは視覚的要素が多用されるため、十分な環境を構築することは難しかったと考えられます。そこで「Miro」を利用して「共感」、「定義」におけるディスカッションを深める工夫がなされました。

 

Miroを利用したディスカッションの記録
共感、定義、アイデアまでを一つの画面で同時に進行している様子がわかる

2021.7.2